06ダイアリー

配送の要、バイク便ベテランオペレーター業務の物語

無数のモニターが並ぶ配車室。そこは、都心の道路網という巨大な神経系をコントロールする司令塔だ。

「受付、池袋から大手町。書類一通、超急ぎで!」

ヘッドセットから飛び込む声と同時に、ベテランオペレーターの早坂(はやさか)の指先がキーボードを駆け抜けた。画面上に輝く何十台もの光点——それが今、街中を疾走するライダーたちだ。現場歴10年、マップを見ずとも交差点の信号サイクルや時間帯ごとの渋滞ポイントまで頭に入っている。

その時、警報音とともに画面が赤く点滅した。

「早坂さん! B-12(12号車)の佐々木がパンクです。赤坂の交差点手前で動けません。積荷は15分後に丸の内の役員会へ届ける契約書!」

配車室に緊張が走る。役員会の開始まであと20分。赤坂から丸の内、普通に走ってもギリギリの距離だ。佐々木の現在地から一番近いライダーを探す。だが、周辺の走者は全員別の案件を抱えて塞がっていた。

「ダメだ、代走が捕まらない……!」後輩が焦りを見せる。

だが、早坂の瞳は冷静そのものだった。彼女は瞬時に拡大マップを切り替え、広域の動態データを脳内で走らせる。

(首都高の出口……皇居周辺の通行規制……工事中の抜け道……)

「大丈夫。佐々木、そのまま積荷を持って徒歩で青山通りへ向かって。歩道橋の下で待機」

早坂は素早く別のラインを叩いた。

「C-05、聞こえる? 今どこ?」 『こちらC-05、新宿で配送完了したところです』 「至急、外苑東通りから赤坂へ向かって。ルートは明治通りを回避、靖国通りから半蔵門へ抜けて。佐々木から荷物を受け取ったら、そのまま代走で丸の内へ。12分で行ける?」

一瞬の間。そして、不敵な笑みを含んだ声が返ってきた。 『早坂さんのルート指示なら、10分で着けてみせますよ』

早坂の指示は完璧だった。渋滞をあらかじめ予測し、わずかな「抜け道」を繋ぎ合わせた最短のビジョン。

10分後。佐々木とC-05が路上で鮮やかにバトンリレーを果たす。そして役員会が始まる3分前、C-05の「配達完了」のサインがモニターに灯った。

配車室に小さく安堵の息が漏れる。早坂は髪をさっとかき上げ、冷めたコーヒーに口をつけた。

「よし、次いくよ」

姿は見えずとも、彼女の描く無 established なラインが、今日もこの街の時間を繋いでいる。輝く画面を前に、都市の影の指揮者は静かに微笑んだ。

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